ドイツに住んで約20年近くになるが、特にここ数年ドイツのビール市場が目に見えて変わってきているのを感じる。伝統的なPilsner(ピルスナー)よりもヘレス(Helles)が好まれる傾向が極めて顕著になってきているのだ。これはレストランで置かれているビールの種類の変化でもはっきりとわかる。
この変化を大きな理由は、いわば伝統的なピルスナーの「ホップの効いた苦味」よりも、ヘレスの「麦芽の甘みとマイルドな口当たり」が特に若い世代に好まれるようになってきているからであるという話をよく聞く。実は筆者はHellesの方がPilsnerよりもアルコール度数は低くて、そのことが前者を飲みやすくしているのかと思っていたのだが、実際には両者でアルコール度数にほとんど違いはなく、統計的に見るとむしろHellesの方がアルコール度数がやや高い製品が多いようである。マイルドな口当たりが、アルコールが少ないように錯覚させるのかもしれない。食事と一緒に飲む場合は苦味で口をリセットできるピルスナー、ただ何杯も飲み続けるならマイルドなヘレス、という使い分けもされるようである。
ビールの広告も結構変わってきたように感じる。以前は、80-90年代が最盛期だった男性バンドグループなどを大きく出して、男性中年層に訴えるような広告が目立ったが、最近では特定の性別や年齢層を意識させないような「爽やか系」の広告を多く目にするようになった。

その一方、最近は特に知り合いのドイツ人を見ていると、アルコールをそもそもあまり消費しないという人も増えてきているように感じる。「酒は百薬の長」「少しのアルコールは健康にいい」という長年の伝説は嘘で、アルコールは消費しなければしない方が身体に良いということが近年科学的に明らかになってきており、特に筋トレなどで毎日身体を鍛えることに熱心な若者からすると、アルコール消費に踏み切る積極的な理由を感じないのであろう。とはいえ、殆どの家に冷房がないドイツ社会においては、暑い夏にはHellesをがっつりと飲む文化はまだまだ続くように思う。