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ドイツではなぜパルメザンチーズを見かけないのか?|EUの原産地呼称保護

ドイツのスーパーでパルメザンチーズを買おうと思っても、パルミジャーノあるいはパルメザンと明確に書かれた製品をなかなか見つけることができない。少し高級なスーパーで探しても同じことである。パルメザンチーズと似た感じのチーズはあっても、はっきりとパルメザンと書かれているチーズにはなかなかお目にかかれないのだ。これはなぜなのか?

その理由ははっきりしている。むしろ日本のように「パルメザンチーズ」が巷に氾濫している方が実は異常なのだ。EUではパルメザンチーズは原産地呼称保護の対象であり、EU域内においては本物のパルミジャーノ・レッジャーノ以外がパルメザンを称することは厳しく規制される。シャンパーニュ地方以外の発泡酒がシャンパンと名乗ったり、ポルト産でない酒精強化ワインがポルトーワインを名乗るのを禁止されているのと同じである。実際、偽パルメザンの存在は大きな問題だと言われ、本物「1」に対して偽物が「15」出回っていると言われるほど偽物が市場を席巻していると言われるが、偽物がパルメザンとして堂々と販売されているのはヨーロッパ域外が主で、ドイツではE Uの規制の効果のためか偽物どころか本物すら目にしない。

日本ではクラフト・ハインツ社の「パルメザンチーズ」が広く市場に出回っている。クラフト・ハインツというとドイツっぽい社名だがアメリカの会社で、チーズもアメリカ産で本物のパルメザンではない。日本の会社の多くはパルメザンという語をチーズの形態のような意味で間違って使っており、明治のような大企業ですら「十勝パルメザン」などというヨーロッパの人が見たら意味不明だと仰天するような名前の製品を悪びれもなく販売している。

もっとも、日本の「偽パルメザン」の良いところは、前述のクラフト・ハインツ社の製品に代表されるように徹底的に水分を飛ばして干からびさせて屑状にした粉チーズが卓上利用のために販売されていることであり、こうした製品は開封後も常温で一ヶ月程度は持つとされるのは便利である。一方、チーズといえば生が主流のヨーロッパでは日本のような常温保存を想定した粉チーズは滅多に見かけず、細かく削り下ろしたチーズがパックで冷蔵販売されているが、この種の製品は賞味期限も短く開封後はすぐに使い切らないといけない。

その中でもドイツでパルメザンの代替品として有名なのがグラナ・パダノ(Grana Padano)である。すでに粉チーズ状になったものはスーパーで冷蔵されたものが比較的安価で手に入るし、ブロック状の物を買って使う分だけすりおろすのもありである。パルメザンのようにパサパサですぐに崩れるような感じではないので、ブロック状のグラナ・パダーノを切り分けてそのまま食べるのも美味しい食べ方の一つである。

ドイツで販売されているグラナ・パダーノ。左は粉チーズで右側はブロック型。